アメリカの偉大な詩人であるマヤ・アンジェロウはかつて、「人はあなたが言ったことも、行ったことも忘れてしまうが、あなたに対して抱いた感情を忘れることはない。」と言いました。
顧客体験にも同じことが言えます。ほとんどの消費者は、キャッチコピーがどれほど秀逸であってもお洒落なスローガンを忘れてしまいます。またほとんどの場合、どれほど周到に行われたサイトの新たな改善点であっても、消費者は気づきもしません。
しかし、彼らはサイトに対して抱いた感情を忘れることはないでしょう。
顧客体験向上の重要性
CEOの88%が顧客ロイヤリティに関心を持つ時代において、顧客体験の向上がこれまで以上に重要になっています。
人々の選択肢が以前より大幅に増え、顧客獲得コストが上昇したことにより、すべてのビジネスは経済が停滞するなかで収益の確保および改善に苦心していることを考えれば当然のことです。
このような状況下では、マーケティング担当者は競合企業と全面的な競争に陥ることは避けられません。しかし、Intuit社のCEOであるScott Cook 氏は「競合企業との競争ではなく、顧客に焦点を当てること」を推奨しています。
既存のマーケティング戦略の多くは、依然として真の意味での顧客第一、顧客中心ではありません。一方でこうした状況は想定しやすく、無理もない部分があることも事実です。
我々はマーケティング担当者として、マーケティングファネルの最適化や最新技術の導入および実装、データドリブンな意思決定がますます求められるようになっています。そして、その間絶えず競合企業の状況をウォッチしておくことも必要です。
確かにこれらマーケティングの観点はすべて重要なものですが、我々は顧客体験のことを疎かにしてしまうことが多々あります。これはある分野に限ったことではなく、オンライン上の小売業からB2BのSaaS、そして精密電子機器業界からメディア業界まで、ほとんどすべての業界で共通して言えることです。
いずれにせよ、非常に多くのビジネスが同じ境遇にあることから、優秀なマーケティング担当者から見ればここに競争上の利点を開拓するチャンスが埋まっているということになります。
顧客本位のマーケティング戦略を構築して、顧客中心主義のビジネスへと進化することで、ブランドを他社と差別化して成長を加速化させることになり、ブランドのファンとなってくれた顧客から販売した商品だけにとどまらない、高いライフタイムバリューを創出することができます。
顧客本位のマーケティング戦略とは
顧客本位のマーケティング戦略は、顧客のニーズや興味関心、体験、期待といったものを多面的に捉えて構築されるアプローチです。
これは何よりも顧客に重きを置く戦略で、分析やアンケート調査、共感力、直感をフルに使って顧客を喜ばせる体験作りをします。
最終的には、顧客本位のマーケティング戦略のすべての観点が、最高の顧客体験を作り出すという唯一の目的に合致します。顧客中心のマーケティング戦略がうまく機能すれば、顧客が単なる消費者からブランドのファンや支援者となっていくでしょう。
まずは顧客をよく理解すること
顧客中心のマーケティング戦略構築の最初のステップは、彼らのニーズや欲望、願望を把握することです。 結局のところ、人間としての彼らを理解しなければ、顧客中心の戦略を構築することはできません。
顧客の理解を深めるには様々な方法があります。特定の人口集団や購買行動に関するデータ分析の実施からはじめると良いでしょう。一方で、我々は数字を超えた質的な部分を捉えていく必要もあります。すなわち、顧客が価値を感じるものや関心があるものを把握し、”共感” の視点で顧客にアプローチする必要があるのです。
共感ベースのアプローチとは例えば以下のようなものです。
- 自社ブランドのカスタマージャーニーを自分で体験する。
- 顧客として自社営業チームに相談してみる。
- カスタマージャーニー内の各地点で自分が(=顧客が)何を感じるか知る。
- 顧客が商品以上に自社の何に関心を持っているか把握する。
- 定期的に顧客アンケートをとる。
これらによって得られる洞察は、制作するコンテンツからランキング掲載を目指すキーワード、そしてサイトUXに至るまで、マーケティング戦略の構築に役立ちます。
顧客本位のSEO
顧客中心主義とSEOは、一見共通点が無いように思えるかもしれません。しかし、最新のSEOはすべての観点で顧客を第一に考えて実施するべきです。
顧客に提供するコンテンツは、まさに彼らが探しているものである必要があります。つまるところ、検索意図とは顧客行動と同義なのです。
顧客が求めるものを中心としたコンテンツにしなければ、検索結果に掲載されるコンテンツの順位に悪影響を及ぼすだけでなく、顧客があなたのサイトから離れて競合企業のサイトへ遷移してしまう可能性があり、これはブランドの価値と収益の両方に影響してしまいます。我々はアルゴリズムのためではなく、顧客のためのコンテンツを制作しなければなりません。
その上、Googleは、各ページやコンテンツの検索結果における掲載位置を判断する際に、サイト上の顧客体験が重要な検討要素になることを一貫して言及しています。
サイト上の顧客行動の把握は重要であり、ここでテクニカルSEOが重要な役割を果たします。顧客体験が優れていると、顧客が探しているものを見つけやすくもなります。これは顧客の役に立つだけでなく、我々にもメリットがあります。商品が見つけやすく、購入しやすいサイトであれば、おそらく売上が自然と上昇する可能性が高まるでしょう。
顧客中心主義を社内に浸透させること
顧客中心主義を組織の至るところに浸透させることが重要です。それが、業務の成功に不可欠な要素になります。
マーケティング担当者としては、顧客第一のマーケティング戦略に着手したいと思いますが、まずはアプローチを組織全体に浸透させることが重要です。ただ、これは簡単なことではありません。CTOやCRO、そしてCEOさえも、最初はこうしたアプローチを重視しないでしょう。
とはいえ、これが不可能というわけではありません。
適切なアプローチを取れば、CTOは顧客本位のプロダクトがエンゲージメントの改善をもたらすこと、CROは顧客本位のアプローチが収益に良い影響をもたらすことを理解するでしょう。結局、エンゲージメントの高い顧客とは長期的なLTVを提供してくれる顧客のことです。そして前述の通り、CEOの88%がすでに顧客のロイヤリティに関心を持っていることも事実です。